「3つの予防」と「4つのケア」

今回は、職場のメンタルヘルス対策の基本となる「3つの予防」と「4つのケア」の考え方についてご紹介いたします。
職場のメンタルヘルス対策の基本的枠組みとしては、厚生労働省により定められた「労働者の心の健康保持増進のための指針」が参考になります。この指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、同法第69条第1項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定められたものです。

事業者は、自らがストレスチェック制度を含めた事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明するとともに、衛生委員会等において十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」 やストレスチェック制度の実施方法等に関する規程を策定する必要があります。

また、その実施に当たっては「3つの予防」が円滑に行われる必要があります。

  • 一次予防:ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止すること
  • 二次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行うこと
  • 三次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行うこと

そして、これらの取り組みにおいては「4つのケア」を効果的に推進し、職場環境等の改善、メンタルヘルス不調への対応、休業者の職場復帰のための支援等が円滑に行われるようにする必要があります。4つのケアとは、以下の通りです。

  • セルフケア:労働者本人がストレスに対して理解を深め、個人的に対処すること。ストレスチェックの受検やストレスに関連した研修の受講など。
  • ラインによるケア:職場の管理監督者が従業員に対して行うケア。普段と変わった様子がないか従業員の様子に目配りをしたり、従業員からの相談に応じたりすること。
  • 事業場内産業保健スタッフによるケア:産業医や保健師等のスタッフが企業に対して行うケア。メンタルヘルス対策の企画立案や、医学的知見を活かした指導・助言など。
  • 事業場外資源によるケア:外部の専門機関や専門家を活用したケア。地域産業保健センターや社外EAP(従業員支援プログラム)による相談窓口や研修サービスの活用など。

「3つの予防」に関して言えば、一次予防が十分に機能してメンタルヘルス不調の芽を事前に摘み取ることができれば理想的といえます。ただし、いくらストレスチェックの実施や職場環境の改善に力を入れたとしても、メンタルヘルス不調の発生を完全に予防することは困難です。一次予防に力を入れつつ、メンタルヘルス不調の兆候が現れたときのための二次予防、メンタルヘルス不調者が実際に発生してしまったときのための三次予防の体制を準備しておくことが必要です。

「4つのケア」についても同様のことが言えます。セルフケアが十分に機能してメンタルヘルス不調が発生しないことが理想ですが、すべての従業員が常に良好なメンタル状態で仕事をし続けることは困難です。セルフケアに力を入れつつ、従業員の調子が悪くなった時のために、ラインによるケアをはじめ他の3つのケアがお互いに補完して機能する体制を準備しておくことが必要です。

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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