労働安全衛生法改正-ストレスチェックの実施がすべての事業所に義務付けられます-

去る2025年5月8日、労働安全衛生法の改正が国会で可決・成立しました。今後、厚生労働省から指針やQ&A、マニュアルなどの資料が公開され、50人未満の事業所におけるストレスチェックの具体的な内容が明らかになると思われます。今回は、厚生労働省の検討段階でまとめられた中間とりまとめの資料(2024年11月に公開)から予想されるポイントを整理したいと思います。

  1. プライバシー保護
    ・当初、50人未満の事業場では産業医の選任義務が無く情報管理が適切に実施されない懸念があり、ストレスチェックの実施は努力義務とされた。
    ・しかし現状ストレスチェックの実施を外部機関に委託している事業場は7割を超えており、個人情報の管理を含めて外部機関を活用する方法がある。
    ・50人未満の事業場においては、原則として、ストレスチェックの実施を労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することが推奨される。ただしその場合も事業者が実施方針の表明や実施計画の策定等によりストレスチェック制度に主体的に取り組んでいくことが基本となる。
  2. 医師の面接指導と事後措置の重要性
    ・50人未満の事業場でも医師の面接指導を実施すべきとの意見がある。
    ・事業場の実情に応じた対応が重要であり、トラブル対応能力の養成が求められている。
    ・国は、好事例やトラブル事例をまとめて展開するべきである。
  3. 50人未満の事業場に即した実施内容
    ・50人未満の事業場に即した実施内容を整理し、マニュアルを作成する必要がある。特に10人未満の事業場についてはその実情を考慮した実施内容を示す必要がある。
    ・衛生委員会に代わる労働者の意見聴取の方法を考慮することが重要である。
    ・労基署へのストレスチェック実施結果の報告義務は、負担軽減の観点から課さないことが適当である。
  4. 地産保による支援等
    産業医の選任義務が無い50人未満の事業場では都道府県産業保健総合支援センター(産保センター)及び地域産業保健センター(地産保)の支援体制の充実が重要である。
    面接指導以外の相談を選択する高ストレス者への対応について、地産保の体制強化や「こころの耳」の相談窓口の充実を図っていく必要がある。

以上です。
ストレスチェック関連の情報については今後も随時更新していきたいと思います。

参考:「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」の中間とりまとめ

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

社労士の業務を通じて、従業員が安心して働ける職場作りをサポートします。また、人材マネジメントや健康経営に関する知見を活かし、従業員が健康で思い切り働ける環境作りをサポートすることで企業の生産性向上にも貢献いたします。