ストレスチェックに関する結果の保存について

ストレスチェックを実施したら、事業者はその情報を管理しなければなりません。ストレスチェック実施によって発生する情報で、とくに気をつけて管理しなければならないものは以下の3つです。

  1. 個人のストレスチェック結果
  2. ストレスチェック後の医師面接の結果
  3. 集団分析の結果

基本的には事業者に結果の保存義務がありますが、個人のストレスチェック結果だけは少し毛色が異なる点に留意が必要です。労働者が事業者への開示に同意した場合を除き、事業場で選任した実施者、実施事務従事者以外は見ることができません。したがって情報の管理も実施者、実施事務従事者が行う必要があり、事業者は保存場所を確保するという役割分担となります。
以下、それぞれの情報の保存についてまとめます。

個人のストレスチェック結果の保存

上述のように、労働者が事業者への開示に同意した場合を除き、事業者が保存場所を確保して、実施者または実施事務従事者が保存します。細かい点ですが労働安全衛生法は実施者や実施事務従事者に対して義務を課すことはできないため、実施者や実施事務従事者が結果を5年間保管することが「望ましい」としています。

保存が必要な記録の内容は

  • 個人のストレスチェックのデータ
  • ストレスの程度
  • 面接指導の対象者か否かの判定結果

です。受検者が記入・入力した調査票の原票は必ずしも保存しておく必要はありません。

保存方法は、紙媒体のほか、電子媒体(データ)でも可能です。保存場所は事業場内の施錠可能なキャビネットやサーバー内のほか、外部委託先とすることもできます。外部委託先の多くは結果の保管も引き受けてくれるところが多いですが、プランによっては含まれていないこともあるので留意が必要です。
保存方法、保存場所については衛生委員会等で調査審議したうえで事業者が決定し、ストレスチェック実施規程に盛り込むなどして労働者にも周知します。

なお、労働者が事業者への開示に同意した場合は、事業者に結果の保存義務(5年間)が生じます。事業者は、開示に同意した情報とそれ以外の情報を区別して管理する必要があります。

面接指導の結果の保存

個人のストレスチェック結果と違い、事業者が保有する情報ですので、事業者に5年間の保存義務があります。人事権がある者も閲覧できます。ただし、労働者の就業上の措置に関わる重要な情報ですから、ストレスチェック実施規程で閲覧できる者の範囲を定め、その範囲の者しか閲覧できないような形で保管することが必要です。

なお、以下の項目が記載されたものであれば、医師からの報告をそのまま保存することで足りるとされており、そのような方法が一般的です。ただし、後に述べる安全配慮義務を果たしていることを示すためには、医師の意見を受けてどのような就業上の措置を図ったか、その結果まで記録しておくと良いでしょう。

  1. 面接指導の実施年月日
  2. 当該労働者の氏名
  3. 面接指導を行った医師の氏名
  4. 当該労働者の勤務の状況
  5. 当該労働者の心理的な負担の状況
  6. その他の当該労働者の心身の状況
  7. 当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

集団分析の結果

集団分析の結果については、集団分析の実施そのものが努力義務となっているため、結果の保存についても事業者が5年間保存することが「望ましい」とされています。
また、集団分析の結果は個人情報では無いものの、組織のストレス状態を示すため、一般の従業員の目に触れると社内での風評(○○課は高ストレス組織だ)につながる可能性もあります。面接指導の結果と同様、ストレスチェック実施規程で定められた範囲の者しか閲覧できないような形で保管しましょう。

実務上の対応

実務上の対応は、外部委託先がどこまで対応しているか、実施事務従事者が社内にいるか/外部委託しているかによって変わってきます。おそらく多くの場合は、実施事務従事者が社内におり、
・個人のストレスチェック結果は外部委託先で保存
・面接指導の結果、集団分析の結果については社内で保存
することとし、これらの情報についてはすべて実施事務従事者が管理するのが一般的です。

注意する点としては、外部委託先を変更する場合、従前の外部委託先との契約が切れるとデータの保存もしてもらえないので、一旦社内にデータをダウンロードする必要があり、その後は社内で保管する必要があります。

結果の保存の重要性

稀なケースですが、社員が精神疾患を発症して会社を相手に訴訟を起こした場合など、ストレスチェックを実施していたか、面接指導の意見に沿って就業上の措置を図ったか等を問われることがあります。いざという時に会社が安全配慮義務を果たしていることを証明できるよう、ストレスチェックや医師面接の結果はきちんと保存しておきましょう。

 

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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