小規模事業場ストレスチェック実施マニュアルの素案が公開
先日(2025年11月10日)のワーキンググループで小規模事業場向けストレスチェック実施マニュアルの素案が提示されました。これから今年度末の公開を目指して、検討を経て最終化されていくと思いますが、47ページと現行の200ページを超えるものよりもだいぶ読みやすくなっていると思います。以下、現行マニュアルからの変更点を中心にまとめます。全体をご覧になりたい方は以下からご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001592574.pdf
【実施の流れ】
外部委託を前提とするので、準備段階で「ストレスチェックの委託先の選定・契約」が入ったのは実態に沿っていて良いと思います。実務的には、委託先が決まらないと決められないことも多いので、社内ルールの作成や関係労働者の意見を聴取する前くらいに委託先を検討するのが良いと思います。
【事業者による方針の表明】
現行の実施マニュアルには無かった事業者の方針の例が明示されました。
【関係労働者の意見聴取】
50人未満の事業場には衛生委員会の設置義務が無いことから、代わりとなる関係労働者の意見を聴く機会の例が示されています。
【ストレスチェック制度の社内ルール】
現行マニュアル(大企業向け)では実施規程を定めて周知することとされていますが、今回の小規模事業場向けでは簡略化した社内ルールの例が示されました。やたら文字数の多い規程を作るよりは実効性があって良いと思います。
【実施体制】
実施者、実施事務従事者は外部機関の者を選任することが”イメージ”として示されました。実施者は外部委託になるだろうと思いますが、実施事務従事者は外部機関だけでなく社内にもいないと、外部委託先を変更するときのデータ保存に支障が生じると思いますがどうでしょうか。
【外部機関によるサービス説明】
外部委託先を選定する際に「サービス内容事前説明書」を提出させることとされました。従来から契約する際には当然に説明があったような項目ですが、定型化することによる説明漏れの防止効果はあると思います。
【医師の面接指導】
50人未満の事業場では地産保が利用できますのでその旨記載されています。ただ、「地産保の利用か/委託先のオプションサービスの利用か、あらかじめ決めておく」のは事業者には都合が悪いような気がします。多くの事業者は、無償の地産保が利用できるなら利用したいが、待たされたりスケジュールの都合が合わないなら委託先に委託したいと考えるのではないでしょうか。
【ストレスチェック結果の通知】
現行のマニュアルよりわかりやすく整理されました。医師面接の申出が少ないことを踏まえれば、セルフケアの情報提供は非常に重要だと思います。
また、現行マニュアルで想定されている「事業者が(本人同意を得て)個人結果の提供を受ける」ことは想定されないとされました。大企業でも適用されるケースはきわめて少なく、その割に企業側の対応や管理を複雑にしてしまっているので、想定しないことが妥当だと思います。
【面接指導の申出】
直接事業者に申し出る場合と、外部委託先に申し出る場合の2つが明示されました。医師面接を申し出る者の割合が少ないことから、外部委託先に申し出る場合の流れが具体的に示されました。

直接事業者に申し出る場合もストレスチェックの結果を事業者が取得することは想定していないようで、面接を担当する医師には当日面接時に労働者が結果を持参する方法が考えられますが、医師側が十分対応できるかどうかが気になります。
外部委託先に申し出る場合は、外部委託先が医師面接を手配するなら事務はすっきりしますが、地産保に面接を依頼するのであれば大きなメリットは無さそうな気がします。
【面接指導以外の相談対応】
医師面接を申出る労働者の割合が現状きわめて低い中、会社に知られず相談できる先があることが非常に重要だと考えます。今回のマニュアルで面接指導以外の相談について項目を独立させて説明されている点は非常に良いと思います。
社労士 山中健司
東京都社会保険労務士会
この記事の執筆者:社労士 山中健司
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