毎月の給与を計算するとき、残業代はきちんと計算しなければなりません。
そして、一定の時間を超える労働時間には割増率が適用されますので、割増率を乗じた賃金を支払う必要があります。
しかし、すべての残業に対して割増率を適用しなければならないわけではありません。
これはどういうことでしょうか。
まず、「所定労働時間」と「法定労働時間」を区別する必要があります。
「所定労働時間」は「会社や雇用契約で定められた、その労働者が働くべき時間」のことです。
人によって1日8時間のこともあれば、1日6時間、1日4時間の人もいるでしょう。また、人によっては「この日は8時間、この日は6時間」のように日によって所定労働時間が異なることもあります。
一方、「法定労働時間」は労働基準法で定められた労働者が1日や1週間に働くことができる最大の労働時間のことです。1日の労働時間は最大8時間、1週の労働時間は最大40時間と定められています。
(一部の業種で規模によっては例外があります)
一般に労働者が「残業した」というのは予定していた1日の労働時間を超えて働いた場合に使われますね。したがって所定労働時間を超えて働いたら「残業した」、その働いた分の時間を「残業時間」としましょう。ですから「残業時間=その日の所定労働時間を超えた労働時間」となります。
一方、労働基準法で割増賃金の支払いが義務付けられているのは「法定労働時間」を超えた労働(時間外労働)に対してです。
上述の通り一部の業種を除いて1日8時間、1週で40時間を超えた労働時間が割増率の適用対象となります。
ここでいう「時間外労働」とは「法定時間外の労働」を意味しており、イコール残業ではありませんのでご留意ください。
これらをイメージにすると下図のようになります。
世の中では「所定労働時間」と「法定労働時間」、「残業」と「時間外労働」が区別されていなかったり、混同されて使われているケースもあるので、まずは上記のイメージを参考に4つの単語の意味を正確にご理解いただければ幸いです。
所定労働時間が法定労働時間と一致する場合は大きな混乱は生じませんが、最近は子育て中で時短勤務の労働者も増えていますので、「残業」と「時間外労働」の区別が重要になっていると思います。
「うちの会社の給料、ちゃんと計算できているかな?」と思われた方はお気軽にお問合せください。
社労士 山中健司
東京都社会保険労務士会
この記事の執筆者:社労士 山中健司
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