小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルについて⑪-医師からの意見聴取、就業上の措置、面接指導結果の記録と保存-

今回は「医師からの意見聴取」「就業上の措置」「面接指導結果の記録と保存」(小規模向けマニュアルP.22~23、P.25)について見ていきます。

医師からの意見聴取

医師による面接指導を実施した場合、事業者は就業上の措置の必要があるか、どんな措置を講じるべきかについて、医師から意見を聴取しなければなりません。
面接指導を行った医師からは、面接指導結果と意見書が提供されます。意見書には、就業制限や要休業などの就業区分と、具体的に必要と考えられる就業上の措置の内容が記載されています。

【面接指導結果報告書と意見書の記載例】出典:厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル

就業上の措置

事業者はこの意見書の内容をもとに、就業上の措置を検討し、決定します。以下の点に留意しましょう。

  • 労働者の意見も十分に聞いて、話し合いを通じて労働者の理解が得られるようにしましょう。労働者の不利益な取り扱いにつながらないように配慮が必要です。
  • 職場の管理監督者の理解を得ることが不可欠です。労働者のプライバシーに配慮しながら、就業上の措置の目的、内容について説明し、管理監督者の理解を得るようにしましょう。管理監督者がいない場合は、当該労働者が関係する職場の同僚に対して説明しましょう。

また、就業上の措置は永続的なものではありません。医師からの意見書には措置の期間が記載されているので、その期間の経過を目処に本人の状態を見ながら、順次通常の勤務に戻す等の措置を講じていきます。このときも労働者とよくコミュニケーションを取り、心身の負担が過度にならないようにしましょう。

医師からの意見書には職場環境の改善についての意見が含まれることもあります。職場環境の改善に関する意見は、人事労務管理に関わるものが多いので、人事労務担当者や管理監督者とも相談して対応を検討しましょう。また、上司のパワーハラスメントが背景にあることがわかることもあります。このような場合は当該労働者の他にもハラスメントを受けている労働者がいないか、情報を収集して適切に対応することが必要です。ハラスメントに限らず、職場環境や組織の運営に問題がないか、組織の問題としても受け止めて、職場環境の改善につなげることが重要です。

面接指導結果の記録と保存

面接指導結果の記録は事業者で5年間保存する義務があります。記録には、以下の項目が記載されていることが必要です。

  1. 面接指導の実施年月日
  2. 当該労働者の氏名
  3. 面接指導を行った医師の氏名
  4. 当該労働者の勤務の状況
  5. 当該労働者の心理的な負担の状況
  6. その他の当該労働者の心身の状況
  7. 当該労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

通常は医師から入手する面接指導結果と意見書にすべての項目が記載されています。結果の保存にあたっては、労働者の就業上の措置に関わる重要な情報ですので、関係者以外は閲覧できないように留意しましょう。

また、安全配慮義務を果たしていることを示すためには、上記の項目に加えて、医師からの意見を受けてどのような就業上の措置を図ったか、その結果まで記録しておくと良いでしょう。稀なケースですが、社員が精神疾患を発症して会社を相手に訴訟を起こした場合など、面接指導の意見に沿って就業上の措置を図ったか等を問われることがあります。いざという時に会社が安全配慮義務を果たしていることを証明できるよう、医師面接の結果はきちんと保存しておきましょう。

なお、面接指導した医師は必要最小限の情報に限定して事業者に情報を提供する必要があり、診断名など、詳細な医学的情報は事業者に提供することができません。事業者としてもこのような情報を医師に求めてはいけませんので、ご留意ください。

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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