ストレスチェックと定期健康診断の比較

ストレスチェックは会社に義務付けられている定期健康診断と共通点が多いため、これと比較すると理解が早いです。今回はストレスチェックと定期健康診断の共通点、相違点についてまとめていきます。

ストレスチェックと定期健康診断の共通点

対象者

どちらも、常時使用する労働者で、無期雇用もしくは有期雇用で契約期間が1年以上の者とする点が共通です。パート・アルバイトについては、1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者に対して実施の義務があり、短時間労働者(2分の1以上4分の3未満)については実施することが望ましい、とする点も共通です。
ただし深夜業など特定業務に従事する労働者については、「特定業務従事者健康診断」の対象となるので、定期健康診断の対象からは除かれています。一方、ストレスチェックについては特定業務従事者も含めて実施する必要があります。

費用負担

健康診断について、法により事業者に健康診断の実施が義務付けられている以上、当然に事業者が負担すべきものとされています。ストレスチェックについても同様です。

受診(受検)に要した時間に対する賃金支払い

一般健康診断については、一般的な健康確保を目的として事業者に実施義務を課したものであり、業務遂行との直接の関連において行われるものではありません。そのため厚生労働省は、受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべき、としています。ただし円滑な受診を考えると、「事業者が支払うことが望ましい」としています。ストレスチェックもやや表現は異なりますが、労働者の健康確保が事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、事業者が支払うことが「望ましい」としています。
なお、特殊健康診断は業務の遂行に関して当然に実施しなければならない健康診断であるため、受診に要した時間は労働時間であり、賃金の支払いが必要とされています。

労働基準監督署への報告義務

定期健康診断では常時使用する労働者50人以上の事業場で義務付けられています。ストレスチェックでも労働者50人以上の事業場に報告義務が課されています(どちらも罰則あり)。今後実施が義務付けられる50人未満の事業場には労基署への報告義務が課されない見込みです。

結果の保管

定期健康診断では個人票を5年間保管することが事業者に義務付けられています。ストレスチェックも個人結果を5年間保管することが事業者に義務付けられています。ただし、個人結果を管理するのは実施者もしくは実施事務従事者です。

ストレスチェックと定期健康診断の相違点

労働者の受診(受検)義務

定期健康診断は労働者に受診義務がありますが、ストレスチェックでは、労働者に受検の義務は課されていません。これは既にメンタルヘルス不調に陥っている労働者にまで受検を強制すべきでないという考え方に基づきます。受検すべきことを就業規則に規定し、受検しなかったことをもって懲戒処分の対象とすることもNGです。

個人結果の取り扱い(労働者への通知)

定期健康診断の結果は会社も把握し、個人結果は事業者(会社)から労働者に通知されることになっています。一方、ストレスチェックはプライバシー保護の観点から、ストレスチェック実施者である医師等の有資格者から労働者に直接通知されることとなっており、会社は個人結果の通知に関与しません。

実施しなかった時の罰則

定期健康診断を実施しなかった場合、事業者には50万円以下の罰金が課されます。一方、ストレスチェックには実施しなかった場合の罰則はありません。ただし、上述のように50人以上の事業場には労基署への報告義務があり、これを怠った場合には50万円以下の罰金が課されます。

以上です。
ストレスチェックは労働安全衛生法の「健康の保持増進のための措置」に位置づけられるため、制度の一部は定期健康診断のものと共通点が多いです。ただし相違点もあるため、従業員へ制度を周知する際には相違点を意識して説明するのが良いと思います。

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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