ストレスチェック実施規程について

ストレスチェックの実施にあたっては、各種事項を衛生委員会で調査審議したうえで、ストレスチェックの実施に関する規程(実施規程)を定め、これを労働者に周知することとされています。ストレスチェックの準備としては、この実施規程の内容を作成し、社内で合意を取ることが重要になります。

法令上の位置づけ

ストレスチェック実施規程の作成は、ストレスチェック指針(※1)では、

事業者は、当該調査審議の結果(衛生委員会での調査審議)を踏まえ、法令に則った上で、当該事業場におけるストレスチェック制度の実施に関する規程を定め、これをあらかじめ労働者に対して周知するものとする。

とされています。指針は安衛法66条の10第7項に基づいて公表されるもので、事業者は、指針に基づいてストレスチェック制度を実施する必要があります(※2)。また、社内の関係者の合意形成を図り、労働者にも実施前にルールを明確にすることは、制度の実施に対する信頼の形成につながることからも、作成しておいたほうが良いでしょう。

なお、就業規則との関係については、ストレスチェック実施規程は就業規則に該当するものではないとされています(※2)。就業規則にストレスチェックに関する何らかの規定を定めることもできますが、健康診断と違い、労働者に受検を義務付けることはできません。これは、すでにメンタルヘルス不調に陥っている労働者にまで受検を強制すべきでないという考え方があるからです。就業規則に受検の義務を定め、受検しなかったことをもって懲戒処分とすることもできません。

ストレスチェック実施規程で定めること

ストレスチェック実施規程で定めることとして、ストレスチェック指針には以下の項目が示されています。原文のままだと表現が冗長なので、一部簡潔に表記しています。正確な表現はストレスチェック指針を参照してください。

  1. ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
  2. ストレスチェック制度の実施体制
    ・実施者及びその他の実施事務従事者の選任等
  3. ストレスチェック制度の実施方法
    ・ストレスチェックに使用する調査票及びその媒体
    ・ストレスの程度の評価方法及び高ストレス者の基準
    ・ストレスチェックの実施頻度、実施時期及び対象者
    ・面接指導の申出の方法
    ・面接指導の実施方法
  4. ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析(集団分析)の方法
    ・集団分析の手法
    ・集団分析の対象とする集団の規模
  5. ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
    ・事業者による労働者のストレスチェックの受検の有無の把握方法
    ・ストレスチェックの受検の勧奨の方法
  6. ストレスチェック結果の記録の保存方法
    ・ストレスチェック結果の記録を保存する実施事務従事者の選任
    ・ストレスチェック結果の記録の保存場所及び保存期間
    ・セキュリティの確保等の情報管理の方法
  7. ストレスチェック、面接指導及び集団分析結果の利用目的及び利用方法
    ・ストレスチェック結果の本人への通知方法
    ・ストレスチェックの実施者による面接指導の申出の勧奨方法
    ・ストレスチェック結果、集団分析結果及び面接指導結果の共有方法及び共有範囲
    ・ストレスチェック結果を事業者へ提供するに当たっての本人の同意の取得方法
    ・本人の同意を取得した上で実施者から事業者に提供するストレスチェック結果に関する情報の範囲
    ・集団分析結果の活用方法
  8. ストレスチェック、面接指導及び集団分析に関する情報の開示、訂正、追加及び削除の方法
    ・ 情報の開示等の手続き
    ・ 情報の開示等の業務に従事する者による秘密の保持の方法
  9. ストレスチェック、面接指導及び集団分析に関する情報の取扱いに関する苦情の処理方法
    ・ 苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合の取扱い
  10. 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
  11. 労働者に対する不利益な取扱いの防止

この他、厚生労働省のひな型には「ストレスチェックを受けるのに要する時間の賃金の取扱い」といった項目もあります。ちなみにストレスチェックの受検に要した時間の賃金の取扱いについて、厚生労働省は労使で協議して決めてほしいとのスタンスですが、事業の運営の不可欠な条件であることを考えると、「支払うことがのぞましい」との見解です(※2)。

作成の方法とすすめ方

厚生労働省のサイトからひな型をダウンロードできます。ただし、具体的な実施方法は外部委託先をどこにするかによって大きく変わってきます。外部委託先によっては、委託先の実施方法に合わせた独自の実施規程ひな型を提供している会社もありますので、それを利用したほうが効率的な場合もあります。

先述の通り、外部委託先をどこにするかによって具体的な実施方法などが変わってきます。したがって、外部委託を前提とすれば、まずどこの委託先とするかを検討、決定することが作業の起点になるでしょう。外部委託する場合、初回のストレスチェックを実施する際の準備のすすめ方は以下のようになると思います。

  1. 外部委託先の検討、決定
  2. 実施規程案の作成
  3. 衛生委員会での審議(実施規程を確定)
  4. 社内周知

外部委託先が変わると、実施規程の内容に影響が出る可能性があります。後工程で外部委託先を変更することになると大きな手戻りが発生しますので、外部委託先については検討の初期段階で議論し、決裁を取っておくのがスムーズかと思います。

※1心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省)
※2ストレスチェック制度関係Q&A(厚生労働省)

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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