職業性ストレス簡易調査票(57問)について

今回はストレスチェックとして最も多くの事業場で採用されている職業性ストレス簡易調査票について解説します。
前回のコラムで書きましたが、2015年にストレスチェックの実施が50人以上の事業場に義務付けられた際、調査票として決められたものはなく、「職場のストレス原因」「ストレス症状」「周囲からのサポート」の3つの領域を測ることが要件として定められたのみでした。とはいえ何か推奨されるものが無いと事業者側も対応しにくいので、このときに調査票として厚生労働省に推奨されたのが「職業性ストレス簡易調査票」です。

職業性ストレス簡易調査票は平成7~11年度(1995~1999年度)労働省「作業関連疾患の予防に関する研究班」ストレス測定研究グループによって開発されました。職場のストレス対策に有用な、仕事のストレス要因、ストレス反応、および修飾要因を57問という比較的少ない質問数で簡便に測定することができます。また、そのうち12問の回答を使って「仕事のストレス判定図」を作成し、職場のストレス度を健康リスクとして可視化することができます。さらに質問数を23問に絞った短縮版も存在します。
また、57項目にハラスメントやワークエンゲージメント、上司のマネジメント、人事評価などの項目を加えた80項目の新職業性ストレス簡易調査票もあります。

2015年に労働安全衛生法改正でストレスチェックの実施が盛り込まれた際、調査票として推奨されたのが57項目の職業性ストレス簡易調査票であったため、現在企業で行われているストレスチェックの多くはこの職業性ストレス簡易調査票が採用されています。2018年から2019年にかけて行われた産業医、産業看護師を対象に行われた調査(※1)では使用した質問票でもっとも多かった回答は57項目の職業性ストレス簡易調査票で、これにいくつかの項目を付加したものも含めると回答に占める割合は約75%となりました(次いで高かったのは新職業性ストレス簡易調査票もしくはこれにいくつかの項目を付加したもので約16%でした)。

職業性ストレス簡易調査票では以下のような項目を測っています。
■ストレスの原因と考えられる因子(17問)
・仕事の負担(量) 3問
・仕事の負担(質) 3問
・自覚的な身体的負担度 1問
・仕事のコントロール度 3問
・技能の活用度 1問
・職場の対人関係 3問
・職場環境 1問
・仕事の適性度 1問
・働きがい 1問

■ストレスによっておこる心身の反応(29問)
・活気 3問
・イライラ感 3問
・疲労感 3問
・不安感 3問
・抑うつ感 6問
・身体愁訴 11問

■ストレス反応に影響を与える他の因子(11問)
・上司からのサポート 3問
・同僚からのサポート 3問
・家族・友人からのサポート 3問
・仕事や生活の満足度 2問

これらの質問に対する回答結果を、一般労働者の平均値(標準値)をもとに高い/低いを評価します。この標準値は2010年に見直されたのが最後です。労働安全衛生法によるストレスチェック義務化の前であり、現在ではストレスチェックが義務化され大量のデータが存在することから、この標準値を見直す動きがあります。これについては、報告書「職業性ストレス簡易調査票に関する新しい基準値の提案」に詳しいので、ご興味のある方はご参照ください。

(※1)ストレスチェック制度の実施状況および課題に関する調査報告 (2021年日本産業衛生学会)

 

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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