2025.07.10

労働者が感じるストレスの内容

労働安全衛生調査では労働者に対して「仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄があるか」を調査しています。企業のメンタルヘルス研修では定番のコンテンツですし、報道で取り上げられることも多いので目にしたことのある方も多いと思います。

直近の令和5年度労働安全衛生調査のデータによると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は82.7%となっています。ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者について、その内容をみると

  • 仕事の失敗、責任の発生等:39.7%
  • 仕事の量:39.4%
  • 対人関係(セクハラ、パワハラを含む):29.6%
  • 仕事の質:27.3%
  • 顧客、取引先からのクレーム:26.6%

となっています。とくに「顧客、取引先からのクレーム」は前年度の21.9%から大きく上昇して今回5番目に多い割合となりました。

また、就業形態別(正社員、契約社員、パートタイム労働者、派遣労働者)でみるとストレスの内容に違いがみられました。

  • 正社員では「仕事の失敗、責任の発生等」の割合が42.9%ともっとも高い
  • 契約社員では「雇用の安定性」が38.2%でもっとも高い
  • パートタイム労働者では「仕事の量」31.3%、「対人関係(セクハラ、パワハラを含む。)」が30.1%、「雇用の安定性」が29.8%
  • 派遣労働者は「仕事の失敗、責任の発生等」が36.1%、「仕事の質」が35.1%、「雇用の安定性」が31.7%

正社員以外では「雇用の安定性」の割合が高いことがわかります。

さて、冒頭の82.7%という数字を見て「こんなに高かったのか?」と思った方は鋭いです。この質問はかなり前から労働安全衛生調査で聞かれておりますが令和3年度(2021年度)調査までは50%台で推移しておりました。令和3年度調査では53.3%でしたが、令和4年度の調査では82.2%といきなり高くなりました。これにはカラクリがあり、質問の仕方を変えたことが大きな理由です。

令和3年度まで 最初にストレスの有無を選択させ、「ある」を選択した場合にストレスと感じる事柄を3項目まで選択させる
令和4年度以降 ストレスの有無をたずねず、ストレスと感じる事柄を10項目のうちから3項目以内で選択させ、1つでも選択した場合に、ストレスが「ある」と集計

したがって、令和3年度までの結果と令和4年度以降の結果を単純に比較することはできません。質問の仕方を変更した理由は不明ですが、質問の仕方、回答のさせ方を変えると結果が大きく変わる典型的な例といえると思います。

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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