ストレスチェックを実施したら、労働者本人に個人の結果を通知する必要があります。きわめて当然で簡単なことのように思えますが、留意しなければならない点があり、また未然予防に活かすためには工夫が必要なプロセスでもあります。ストレスチェック制度において非常に重要である個人結果の通知についてまとめます。ストレスチェックを自社で運用する場合はとくにご参考ください。外部委託する場合も外部委託先が労働者へ適切に個人結果を通知しているか、チェックの際にご活用いただければ幸いです。
個人結果を通知するうえで留意しなければならない点
実施者または実施事務従事者から本人に通知する
ストレスチェックの結果は実施者である医師等の有資格者か、実施者の指示に従う実施事務従事者から労働者に直接結果を通知しなければなりません。この点、会社から従業員に通知される健康診断結果とは流れが異なりますのでご注意ください。
他の者に見られないようにする
きわめて当然のことですが、機微な個人情報であるため、本人以外の者に見られないような形で通知する必要があります。1つのPCを複数の労働者で使っていたり、共用のメールアドレスを使っている場合には誤って他の労働者に個人結果が見られないよう注意が必要です。また、封書で結果を渡すことがありますが、高ストレス者だけ封筒の厚みが異なると手渡しの過程で高ストレス者か否かを類推されるおそれがありますので配布の際には注意が必要です。個人結果を配布した後、面接指導の対象者にだけ別に封書を配布することも避けたほうがよいでしょう。
通知する内容
厚生労働省のストレスチェック実施マニュアルによると、以下の内容を労働者へ通知することとされています。
- 個人のストレスチェック結果
個人のストレスプロフィール(個人ごとのストレス状況を数値や図表で示したもの)
ストレスの程度(高ストレスに該当するかどうか)
面接指導の対象者か否か - セルフケアのためのアドバイス
面接指導の対象者に対しては、面接希望の申出方法(申出窓口)を伝えることとされ、また、以下の点をあわせて伝えたほうが良いとされています。
- 面接指導を申し出た場合はストレスチェック結果を事業者に提供することに同意したとみなされること
- 面接指導の結果、就業上の措置(時間外労働の制限や配置転換)につながる可能性があること
- 申し出たことに対して不利益な取り扱いをするのは法律で禁止されていること
- 面接指導に要する費用は事業者が負担すること
加えて上記のほかに、以下を通知するとよいとされています。
- 面接指導の申出窓口以外の相談可能な窓口に関する情報提供
- 結果通知時に、結果の事業者への提供についての同意の有無を確認することにしている場合は、そのための文書
私の意見としては、とくに「セルフケアのためのアドバイス」「面接指導の申出窓口以外の相談可能な窓口に関する情報提供」が重要だと思います。面接指導は事業者へ個人結果を提供する必要があることから労働者としてはなかなか申出しづらいところです。面接指導以外の対処方法をあわせて提示することで、労働者自身がストレスチェック結果に応じた対処をとりやすくすることが未然予防のためには重要と考えます。

社労士 山中健司
東京都社会保険労務士会
この記事の執筆者:社労士 山中健司
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