前回は、ストレスチェックの実施時期(スケジュール)について解説しました。今回は、現在ストレスチェックを実施していない会社がストレスチェックを始めるべきタイミングについてご説明します。
労働安全衛生法の改正
2025年に可決された労働安全衛生法改正により、50人未満を含むすべての事業場にストレスチェックを実施することが義務付けられました。ストレスチェック部分の施行時期はまだ正式に発表されていませんが、おそらく2028年の4月頃と予想されています。仮に2028年4月に施行された場合、現在ストレスチェックを実施していない50人未満の事業場は、2028年4月~2029年3月までの間に初回のストレスチェックを実施しなければなりません。
懸念される外部委託先のリソース不足
しかし、2028年4月以降に初めてストレスチェックを実施するよりも、初回のストレスチェックは少し早め(2027年度以前)に取り組むことをおすすめします。理由は、2028年4月~2029年3月の期間はきわめて多くの小規模事業者が初回のストレスチェックを実施することに伴い、ストレスチェックサービスを提供する外部委託先のリソース不足が懸念されるためです。

令和6年の経済センサスによると、従業者規模別の民営事業所数は、50人未満が3,822,823事業所、50人以上は174,865事業所となっています。また、令和6年労働安全衛生調査によると、従業員10人~49人の事業場でストレスチェックを実施しているのは全体の33.5%です。しかも労働安全衛生調査は従業員10人以上の事業場を対象としているため、従業員10人未満の事業場のデータはなく、50人未満の事業場での割合はこれよりずっと低くなると考えられます。50人未満の事業場で現在ストレスチェックを実施していないのは300万事業所前後と推測されます。
これらの事業所が一斉にストレスチェックの実施に向けて動き出した場合、外部委託先の現場では相当な負荷がかかると予想されます。具体的には、営業段階での問い合わせ対応や契約手続き、契約した後のサービス導入に関する説明や問い合わせ対応、従業員データ登録などのシステム設定、サービス導入後の担当者や従業員からの問合せ対応などです。
現在、ストレスチェックのサービスを提供している会社は私が確認した限りで約100社ありますが、現在の契約企業数よりもはるかに多くの契約申し込みがあると考えられ、(会社によって差はあるものの)リソース不足により営業対応、サポート対応に何らかの影響が出ることが予想されます。利用する企業にとっては、サービス内容や料金について情報収集が進みにくかったり、契約手続きに時間がかかったり、サービス導入にあたってのサポートが得られにくい事態が予想されます。とくに人気のある外部委託先には契約希望が多く集まるため、動き出しが遅くなると、希望する外部委託先との契約が困難になり、第二希望以下の委託先にせざるを得なくなる企業も出てくる可能性があります。
少し早めのスタートがおすすめ
そこでおすすめするのが、義務化の施行より前にストレスチェックの取り組みを開始することです。2028年3月以前であれば、外部委託先のリソースにも比較的余裕があり、契約手続きや導入サポートも通常通り受けられる可能性が高いでしょう。利用する企業にとっては、初回のストレスチェックはわからないことも多く、外部委託先のサポートを得ながらすすめる必要があります。当然、2028年4月からの1年間の間にも2回目もしくは3回目のストレスチェックを実施することになりますが、回数を重ねるほど慣れてきますから、初回ほどのサポートは必要としなくなります。1回分もしくは2回分多くストレスチェックを実施するためのコストは当然かかりますが、スムーズにストレスチェックの運用ができ、トータルとして見ればメリットは大きいと考えられます。
2026年3月に小規模事業者向け実施マニュアルが公開予定
厚生労働省は従業員50人未満の小規模事業場向けにストレスチェック実施マニュアルの作成をすすめており、2026年3月末までに公開される予定です。このマニュアルが公開されると、2028年4月以降に実施しなければならないストレスチェックの具体的な手順が明らかになります。2026年4月以降であれば、公開されたマニュアルを参考にしてストレスチェックの準備をすすめることができます。
以上のことを総合すると、2026年4月から2028年3月までの間に初回のストレスチェックを実施することをおすすめします。
社労士 山中健司
東京都社会保険労務士会
この記事の執筆者:社労士 山中健司
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