ストレスチェックの外部委託先①5つのタイプ

今回はストレスチェックの外部委託先の5つのタイプについてご紹介いたします。

現在、私の調べた限りでは国内でストレスチェックサービスを提供している事業者は100を超えます。すべての会社の情報を集めて自社に最適な委託先を絞り込むことは困難な状況になっています。そのため、数ある委託先の中から自社の方針を踏まえてある程度の絞り込みを行い、その中から情報収集を行って比較検討するという方法が現実的です。

最初にどういった条件で絞り込むかはいくつかの方法がありますが、ここでは事業者のタイプを以下の5つに分け、特長と弱点の傾向について解説します。ただしこれは一般的な傾向を示していますので、個別の会社すべてにあてはまるわけではありません。また、私独自のタイプ分けですので、一般的にこうした分類がされているわけではありませんので、ご留意ください。

EAP型

1つ目はEAP型です。EAPとはEmployee Asistance Program(従業員支援プログラム)の略で、主に会社のメンタルヘルス対策を支援する事業者をいいます。ストレスチェックだけでなく、従業員がいつでも利用できるカウンセリングサービスやメンタルヘルスに関する研修も提供していることが一般的です。
特長としては、カウンセリングサービスの提供があり、個人へのケアが充実していることです。ストレスチェック制度では個人へのケアとして医師との面接がありますが、この医師面接は申し出る労働者の割合がきわめて少ないという問題があります。EAP事業者のカウンセリングは会社に知られずに利用できるものが多いため、会社に申し出る必要のある医師面接を利用したくない従業員の受け皿になることが期待できます。また、2015年のストレスチェック法制化より前から事業を行っている会社が多く、メンタルヘルスに関する知見が豊富で、メンタルヘルス研修のバリエーションが多いことや、営業、サポート、コンサルタントなど担当者の知識が豊富なことも特長です。
弱点としては、他のサービスよりも価格は高めになることが多い点です。とくにEAP型の強みであるカウンセリングサービスが付帯されたプランの場合、ストレスチェックだけを提供するサービスよりも価格は高くなることが多いです。

産業医型

2つ目は産業医型です。これは産業医サービスを提供する事業者で、産業医サービスの契約をすると、ストレスチェックのシステムが無償で利用できるような形態が多いです。特長としては産業医と契約しますので、ストレスチェック以外の安全衛生面のアドバイスをもらえますし、衛生委員会の進行のための資料をもらえたりしますので、この機会に産業保健体制を構築したいという会社には良い選択です。また、ストレスチェックの実施には実施者の選任や高ストレス者の面接対応が必要ですが、契約した産業医が実施者や医師面接にも対応してくれる点もポイントです。
弱点としては、EAP型と同様価格が高めになることが多い点です。月額3~4万円の契約を通年で結ぶ必要がありますので、年間の費用は30万円~50万円かかってくることが多いです。

HRテック型

3番目はHRテック型です。近年は勤怠管理や労務管理でクラウドサービスを使う会社が増えていると思いますが、このクラウドサービスの中にストレスチェックの機能を持っているものがあり、これを利用する方法です。最近は健康診断結果の管理システムとあわせてストレスチェックを提供する会社も出てきています。
特徴としては、もともと従業員情報などを登録していますので、従業員データの登録の手間が省けたり、また従業員にとってみても、普段使っているシステムでストレスチェックができますので、利便性が高いというメリットがあります。
弱点としては、メンタルヘルス専業ではないので、メンタルヘルスに関する専門的知見は少ないことが多い点です。また、WEBやスマホでの利用が前提となっていることが多いので、紙での受検に対応していなかったり、対応していてもコストが高いことがあるという点です。

健康診断同時実施型

4つ目は健康診断同時実施型です。これは地域の健診センターや予防医学協会といった団体が実施をしていますが、定期健康診断と同時にストレスチェックに回答してもらうというものです。多くの場合、定期健康診断の際に調査票を配布して記入してもらいますので、回答率が高くなりやすいメリットがあります。定期健康診断とストレスチェックの対象者は同じことが多いので、管理側としても対象者の特定から実施まで一度にできてしまうというメリットがあります。

デメリットとしては、集団分析は得意としないという点です。システムから定型の集計結果が出てくることが多いですが、それについてのコメントやコンサルティングといったサービスは提供されていないことが多いです。健康診断の場合、従業員によって受ける時期が異なることもあるので、集団分析をしても、いつの時点の状況を反映しているか分析しにくいという点もあります。

他業種参入組ほか

5つ目は他業種参入組ほかとしておりますが、その他の企業です。これはもともと他の業種だった会社が、ストレスチェックの法制化をきっかけに参入したような会社や、2015年以降新規に立ち上げられた会社などがあります。それぞれメイン事業によって強みが異なっており、印刷会社のケースでは印刷がとにかく速く安い点が特長であったり、某警備サービス会社の場合には、データベースのセキュリティが強固である点が特長であったりします。弱点としては、他業種がメインの場合はメンタルヘルス専業ではないので、メンタルヘルスに関する専門的知見は少ないことが多い点です。

ただし上記の類型化は大まかな分類です。最近は各社ともサービス強化に努めており、健康診断同時実施型や他業種参入組でもカウンセリングやメンタルヘルス研修のサービスを持ち、EAP型に近いサービス形態になっているところもあります。

外部委託先を検討する際にまず考えていただきたいのは、「この機会にメンタルヘルス対策にしっかり取り組みたいか」という点です。もしストレスチェックだけではなくメンタルヘルス対策にしっかり取り組みたいのであれば、上記のタイプのうち「EAP型」もしくは「産業医型」の事業者を選択することをおすすめします。必要に応じてカウンセリングサービスやメンタルヘルス研修を利用できる点がありますし、とくに集団分析結果を用いた職場環境改善を実施する場合、ストレスチェックを実施した会社がコンサルティングを行えるかどうかが重要なポイントになります。逆にメンタルヘルス対策に取り組む必要は無いと考えているのであれば、法令を遵守できることが目的となりますから、使い勝手やコストの面でHRテック型や健康診断同時実施型を中心に検討するのが良いと思います。

次回は外部委託先を絞り込むその他の条件について解説いたします。

社労士 山中健司

社労士 山中健司

東京都社会保険労務士会

この記事の執筆者:社労士 山中健司

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